研修 01
災害・BCP ── 園が「続けられなくなる」とき、何が起きるか
まず知ること。停電する。断水する。職員が出勤できない。保護者が迎えに来られない。道路が塞がる。給食の食材が届かない。——災害でまず起きるのは、園舎が壊れることより、この「続けられない」状態です。
東日本大震災では、岩手県だけで353の保育施設が被災しました。令和8年7月の熊本地震では、断水と交通の寸断が事業者を長く止めています。BCPが想定しているのは、こうした状態のなかでどの業務を、誰が、どの順番で立て直すかです。
この回では、災害データと園の立地のハザードを一緒に確認したうえで、「なぜ、この計画とこの訓練が必要なのか」を職員全員で共有します。計画を配って読んでもらう回ではありません。
研修 02
応急手当・救命講習 ── 保育園で実際に起きている事故から
まず知ること。心肺蘇生の手順を覚えることが、保育園の救命講習ではありません。保育現場でどのような事故が起きているのかを、公的な事故データで確認するところから始めます。どの年齢に多いのか。どの場所か。どの活動中か。何が重症化につながっているのか。
238件保育施設の死亡事故
(平成16年〜令和7年の累計)
9割以上亡くなったのは
3歳未満の子ども
8割以上起きた場面は
睡眠中
この分布を知ると、備えるべきものが変わります。一般的な救命講習は成人の心肺蘇生が中心ですが、園で必要になるのは乳児の胸骨圧迫であり、背部叩打法であり、そして「呼吸をしているように見える」状態を見分ける目です。
| 睡眠中 | あお向けでの寝かせ方と、5分ごとの確認と記録。異変に気づいたときの、乳児の心肺蘇生 |
| 食事中の窒息 | 背部叩打法と胸部突き上げ法。そして何より、窒息だと気づけるかどうか |
| 水の事故 | 監視を専任にする配置。引き上げたあとの人工呼吸 |
| 送迎バス | 降車時の点呼、車内の目視、安全装置の使い方 |
そのうえで、心肺蘇生・AED・窒息・溺水・外傷・出血・止血の実技に進みます。知識があるから、実技の意味が変わります。元救急救命士が園に伺って直接指導しますので、外部への手配は要りません。
2020年2月、島根県の認定こども園で、4歳の男の子が豆まきの最中に亡くなりました。遊戯室にいたのは園児20人に対して保育士8人。人手は足りていました。心肺蘇生もAEDも行われています。それでも助かりませんでした。窒息だと気づけなかったからです。
これは、人手の問題ではありません。知識の問題です。だから研修で埋められます。
研修 03
不審者・侵入者対応 ── 「来たらこうする」の前に、何が起きるのかを知る
まず知ること。マニュアルを配る研修にはしません。どのような事件が起きているのか。どのような場所が狙われるのか。犯行にはどのようなパターンがあるのか。攻撃する側と園児・職員の位置関係、使われる凶器、侵入されたあとに何が起こり得るか、園舎という建物の物理的な制約。まず、そこを知識として持ちます。
そのうえで考えるのは、「では、この園では現実に何が想定されるのか」です。門はどこか。死角はどこか。0歳児室はどの階か。手が空いている職員は何人か。答えは園ごとに違います。
そして、この研修の目的は不審者を取り押さえることでも、発見することでもありません。襲撃が起きてしまったときに、園児と職員の被害を最小にすることです。ですから、予防・早期発見・通報・避難・隔離と施錠・身を守る・負傷者への対応・救命・止血までを、ひと続きの危機対応として扱います。
※ 代表は、米国テキサス州立大学(Texas State University)ALERRTセンターの CRASE Train-the-Trainer 課程を修了しています。お伝えするのは、海外の犯罪・襲撃事例や研究から得られる知見も参考にしながら、日本の保育現場に適した内容として組み立て直したものです。ALERRTの教材そのものは使用いたしません。
3つの研修は、ばらばらではありません。災害で園が止まることも、子どもが喉を詰まらせることも、刃物を持った人が入ってくることも、行き着く先は同じです。救急車が来るまでの数分を、そこに居合わせた職員が埋められるかどうか。
だから、どの回にも応急手当と止血が関わってきます。3回に分けているのは、一度に詰め込んでも身につかないからです。
3回とも顧問契約に含まれています。年3回の訪問——①BCP周知 ②応急手当・救命講習 ③不審者対応——として実施します。机上訓練は、2年目以降に組み込みます。