保育園・認定こども園に必要な5つの計画|安全計画・非常災害対策計画・消防計画・避難確保計画・BCPの関係
この記事の要点(3行)
①保育園・認定こども園には、防災に関する計画が全部で5つあります。
②「義務」「努力義務」「該当する園だけ」が入り混じっていて、提出先もバラバラです。
③ただし、一体的に作ってよいと国が明記しています。5冊に分ける必要はないと考えられます。
「BCP(業務継続計画)を作らないといけないらしい」「安全計画も要るらしい」「消防署にも何か出している気がする」──園の防災まわりの書類は、いつの間にか増えています。しかも所管する窓口が違うため、全体像を把握するのは容易ではありません。
この記事では、保育園・認定こども園に関わる5つの計画を一度整理します。それぞれ何が根拠で、義務なのか努力義務なのか、提出先はどこか。これらの計画はどうすれば管理が楽になるのかをお伝えしたいと思います。
保育園に関わる計画は、この5つです
| 計画 | 根拠 | 強さ | 提出先 |
|---|---|---|---|
| ①安全計画 | 設備運営基準 第6条の3 | 義務(未実施は減算) | 提出不要(監査で確認) |
| ②非常災害対策計画 | 設備運営基準 第6条第1項 | 努力義務 (ただし訓練は義務) | 提出不要(監査で確認) |
| ③消防計画 | 消防法 第8条 | 義務 | 所轄消防署へ届出 |
| ④避難 確保計画 | 水防法 第15条の3 土砂災害防止法 第8条の2 | 該当区域なら義務 | 市町村へ 届出する +訓練も 報告する |
| ⑤BCP | 設備運営基準 第9条の3 | 努力義務 | 提出不要(監査で確認) |
5つのうち非常災害対策計画については、保育園の非常災害対策計画で必須9項目の書き方まで詳しく解説しています。条文は努力義務ですが、監査基準では「作成すること」と書かれている計画です。
ややこしいのは、「義務」と「努力義務」が入り混じっていること、そして提出先が3種類(提出不要/消防署/市町村)に分かれていることです。順番に見ていきます。
①安全計画 ── 5つを束ねる「年間カレンダー」
令和5年4月から義務化された計画です。5つのなかで唯一「年間スケジュール表」の形をしています。
5つのうちBCPだけが努力義務です。保育園のBCPの努力義務の経緯と、努力義務という言葉の意味は、別の記事にまとめています。
4月から3月までの月別に、施設・設備の点検、児童への安全指導、訓練・研修の予定を書き込んでいく様式です。日常の事故・けが・不審者・交通安全までを守備範囲としています。
そして令和8年7月から、これをやっていない場合の減算が設けられています。しかも「作ったかどうか」ではなく、①職員への周知と研修・訓練 ②保護者への周知 ③定期的な見直し──この3つをそれぞれ1年以内に行っているかで判定されるとされています。
減算の詳しい仕組みは別の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
この記事で覚えていただきたいのは、安全計画が「他の4つを束ねる器」になるということです。訓練・研修の欄には、非常災害対策計画に基づく避難訓練も、消防計画に基づく訓練も、避難確保計画に基づく訓練も、BCPの訓練も、すべて書き込めます。詳しくは後半で説明します。
5つのうち避難確保計画は、対象になる園とならない園があります。条件と、届出から訓練報告までの流れは保育園の避難確保計画で解説しています。
②非常災害対策計画 ── 条文は「努力義務」、でも訓練は「義務」
ここは正確に押さえておく価値があります。よく「非常災害対策計画は義務」と書かれていますが、条文の書きぶりは少し違います。
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第6条は、こうなっています。
第六条 児童福祉施設(略)においては、軽便消火器等の消火用具、非常口その他非常災害に必要な設備を設けるとともに、非常災害に対する具体的計画を立て、これに対する不断の注意と訓練をするように努めなければならない。
2 前項の訓練のうち、避難及び消火に対する訓練は、少なくとも毎月一回は、これを行わなければならない。
つまり、計画を立てること自体は「努めなければならない」(努力義務)ですが、避難及び消火の訓練を毎月1回以上行うことは「行わなければならない」(義務)です。
ただし、条文が努力義務だからといって放置してよいわけではありません。自治体の指導監査基準では「非常災害に対する具体的な計画を作成すること」が指導事項として設けられており、「計画が作成されていない場合」「計画の内容が不十分である場合」が指摘事由になっています。国の通知でも作成が求められています。
計画に入れるべき9項目
自治体の監査基準は、非常災害対策計画に含まれるべき項目を具体的に挙げています。ひとつでも欠けていると「内容が不十分」と判断される可能性があります。
| ① 施設等の立地条件 | ⑥ 避難経路 |
| ② 災害に関する情報の入手方法 | ⑦ 避難方法 |
| ③ 災害時の連絡先と通信手段 | ⑧ 災害時の人員体制、指揮系統 |
| ④ 避難を開始する時期、判断基準 | ⑨ 関係機関との連絡体制 |
| ⑤ 避難場所 |
とくに④の「避難を開始する時期、判断基準」は、見落とされやすい項目です。「いつ逃げるか」を事前に決めておかないと、実際の場面では判断できません。
また、次の点も求められています。
- 火災に対処する計画だけでなく、火災・水害・土砂災害・地震など、地域の実情も踏まえた災害に対処できる内容にすること(災害ごとに別の計画を作る必要はありません)
- 緊急の度合いに応じた複数の避難先を確保すること(指定避難場所/近隣の安全な場所/屋内の安全な場所)
- 災害発生時の家族等への連絡体制、園における子どもの引渡し方法を確認しておくこと
- 計画の内容を職員間で十分に共有すること
- 避難訓練を実施して計画を検証し、見直すこと
③消防計画 ── 唯一「消防署」に出す計画
消防法第8条に基づく計画です。5つのなかで唯一、消防署が窓口になります。防火管理者の選任とセットで、作成したら(変更したときも)所轄消防署へ届け出ます。
ここで重要なのが、消防法が求める避難訓練の回数と条件です。児童福祉施設の基準の避難訓練(毎月1回以上)とは別に、消防法側にも要求があります。
| 消防法が 求めること | 内容 |
|---|---|
| 訓練の回数 | 消火訓練・避難訓練は年2回以上/通報訓練は年1回以上 |
| 事前連絡 | 訓練を実施する場合は、あらかじめ所轄消防署へ連絡すること |
| 夜間訓練 | 訓練のうち年1回は、 夜間訓練または夜間想定の訓練を実施する |
| 設備の法定点検 | 機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごと。結果を所轄消防署へ報告 |
「毎月避難訓練をやっているから大丈夫」と思っている園ほど、この3つが見落とされやすい項目です。事前連絡、夜間(想定)訓練、通報訓練。監査基準にもそれぞれ指摘事由が用意されています。
なお、防火管理者の選任義務の有無や消防計画の様式は、建物の用途・規模・収容人員によって変わります。詳細は所轄の消防署にご確認ください。
④避難確保計画 ── 該当する園だけ。でも届出と報告があります
水防法・土砂災害防止法に基づく計画です。すべての園に必要なわけではありません。対象になるのは、次の条件にあてはまる施設です。
- 浸水想定区域または土砂災害警戒区域のなかにあり、
- 市町村地域防災計画にその名称・所在地が定められた「要配慮者利用施設」であること
保育園・認定こども園は「要配慮者利用施設」に該当します。多くの市町村が対象施設の一覧を公表していますので、まずは自園が載っているかを確認してください。新規開設などで一覧に未掲載でも、区域内に立地していれば対象になる場合があります。
この計画が他と違うのは、「作って終わり」ではないことです。
- 避難確保計画を作成し、市町村へ届け出る
- 計画に基づいて避難訓練を実施する
- 訓練を実施したら、市町村へ報告する
この3ステップが揃って完了と扱われます。実際の指導監査でも「水害等を想定した避難確保計画を策定してください」「水防法の避難確保計画に基づく避難訓練を実施してください」といった指摘が出た例があります。
⑤BCP ── 園が「止まったあと」の話
令和5年4月から努力義務となった計画です。他の4つが「どう身を守るか」を扱うのに対し、BCPは「災害や感染症で園が止まったとき、どう続けて、どう戻すか」を扱います。
書き方の型も違います。安全計画が年間カレンダーなのに対し、BCPは時間軸です。発災直後の初動、当日、数日後、1週間後──と時間の経過に沿って、優先する業務と体制を決めていきます。
努力義務ではありますが、自治体の指導監査基準にはBCPの項目が独立して設けられています。
①未策定 ②職員に周知していない ③研修及び訓練を定期的に実施していない ④定期的な見直しをしていない
それぞれに指摘の標準例文があります。「努力義務だから監査では見られない」とは限りません。
5つを別々に作る必要はありません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
国土交通省の避難確保計画の手引きには、避難確保計画に定める事項を、消防法に基づく「消防計画」や社会福祉施設に求められる「非常災害対策計画」に加えることで、これらの計画と一体的に作成することができると明記されています。
また、非常災害対策計画についても「災害ごとに別の計画として作成する必要はない」とされています。
つまり、必ずしも5冊のファイルを作る必要はありません。1冊にまとめて、提出時に必要な部分を出せばよいのです。
実際、5つの計画は中身がかなり重なります。避難場所、避難経路、連絡体制、役割分担、備蓄──同じことを4回も5回も書いているのが、多くの園の実情です。それぞれ別々に更新しようとするから、どれかが古いまま放置されます。
束ねる器は「安全計画」です
では、何を軸に束ねるか。安全計画です。
理由は3つあります。
- 5つのなかで唯一「年間スケジュール表」の形をしている。他の4つは「手順書」なので、いつやるかを書く欄がない
- 訓練・研修を書き込む欄がもともとある。毎月の避難訓練も、消防法の年2回訓練も、避難確保計画の訓練も、BCPの訓練も、すべてこの1枚に集約できる
- 義務であり、減算の対象でもある。どうせ毎年作らなければならない
安全計画の年間カレンダーに5つ分の予定をすべて書き込んでしまえば、「今年やるべきことは、この1枚を見れば分かる」状態になります。管理は劇的に楽になります。
提出先・届出先の早見表
| 計画 | 作成 | 届出・訓練の報告 |
|---|---|---|
| ①安全計画 | 毎年度 | どちらも不要 |
| ②非常災害 対策計画 | 随時(訓練後に見直し) | どちらも不要 |
| ③消防計画 | 作成・変更時 | 所轄消防署へ届出。訓練は事前に連絡 |
| ④避難 確保計画 | 該当施設のみ | 市町村へ届出。訓練の結果も報告 |
| ⑤BCP | 随時 | どちらも不要 |
外部への届出・連絡が必要なのは③消防計画と④避難確保計画の2つだけです。逆に言えば、この2つは「園のなかで完結しない」ため、漏れると外から分かってしまう可能性があります。
自園の状態を確認する10項目
- 安全計画を今年度分として作成しているか
- 安全計画について、職員への周知・保護者への周知・見直しをそれぞれ1年以内に行っているか
- 非常災害対策計画があり、9項目がすべて入っているか
- 非常災害対策計画に火災以外(地震・水害・土砂災害)の想定が入っているか
- 避難・消火訓練を毎月1回以上行い、記録に日時・内容・参加人員・所要時間・反省点を書いているか
- 防火管理者を選任し、消防計画を所轄消防署に届け出ているか
- 消防法の年2回訓練について、事前に消防署へ連絡しているか
- 年1回の夜間(想定)訓練と、年1回以上の通報訓練を行っているか
- 自園が浸水想定区域・土砂災害警戒区域にあるか確認したか。あるなら避難確保計画を市町村へ届出し、訓練を報告しているか
- BCPを策定し、職員へ周知し、研修・訓練と見直しを行っているか
9番目は、まだ確認したことがないという園が少なくありません。ハザードマップと、市町村が公表している要配慮者利用施設の一覧を見れば分かります。該当しているのに気づいていない、という状態は避けたいところです。
よくあるご質問
Q. 5つも作る余裕がありません。どれから手をつければいいですか?
A. ①安全計画からです。義務であり、減算の対象でもあり、そして他の4つを束ねる器になるからです。安全計画の年間カレンダーを作る過程で、「消防計画はどこにあったか」「避難確保計画は出したか」が自然に洗い出されます。
Q. 非常災害対策計画とBCPは同じものですか?
A. 違います。非常災害対策計画は「その場でどう身を守るか」、BCPは「止まったあとどう続けるか」です。時間軸が違います。ただし避難場所や連絡体制など重なる部分は多いので、記載を共有して構いません。
Q. 避難確保計画の対象かどうか、どう調べますか?
A. 市町村が「要配慮者利用施設一覧」を公表していることが多いので、まずそこで自園を探してください。あわせてハザードマップで、浸水想定区域・土砂災害警戒区域に入っていないかを確認します。判断に迷う場合は市町村の危機管理担当課にお尋ねください。
Q. 小規模保育事業や認定こども園でも同じですか?
A. 地域型保育事業は「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準」により、保育所と同様の対応が定められています。認定こども園については、幼保連携型の場合、安全計画にあたるものが学校保健安全法に基づく「学校安全計画」になります。類型によって根拠が変わりますので、所管の窓口にご確認ください。
Q. 訓練の記録は、どこまで残せばいいですか?
A. 監査基準では日時・内容・参加人員・所要時間・反省点を記すよう求められています。目的は「次回の訓練に反映できるよう」とされていますので、反省点を必ず書くことが実質的な要です。
まとめ
- 保育園に関わる計画は5つ。安全計画・非常災害対策計画・消防計画・避難確保計画・BCP
- 外部への届出が必要なのは消防計画(消防署)と避難確保計画(市町村)の2つ
- 非常災害対策計画は条文上は努力義務だが、避難・消火訓練を毎月1回以上行うことは義務
- 消防法側には年2回訓練・事前連絡・年1回の夜間(想定)訓練・通報訓練という別の要求がある
- 必ずしも5冊に分ける必要はない。一体的に作ってよいと国が明記している
- 束ねる器は安全計画。唯一の年間カレンダーであり、訓練を書き込む欄がある
計画の整理でお困りの方へ
5つの計画を一度に見直すのは、通常業務のかたわらでは簡単ではありません。
- そもそも自園に何が揃っていて、何が無いのか分からない
- 計画はあるが、内容が古いまま更新できていない
- 避難確保計画の対象かどうかを確認したことがない
- 毎月の避難訓練がマンネリ化している
- 5つを1本にまとめて、年間スケジュールに落とし込みたい
こうしたご希望があれば、お気軽にお問い合わせください。
当事務所では、消防職員として20年間の現場経験と、行政書士・防災士・救急救命士の専門知識を活かし、保育園・認定こども園の計画の棚卸しから、安全計画の策定・避難訓練の設計・救命講習・BCP策定まで一貫してサポートしています。まずは現状を拝見して、何が足りないかをお伝えするだけでも構いません。
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この記事の根拠
- 安全計画──児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第6条の3(義務・令和5年4月1日施行)。地域型保育事業所は「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準」(平成26年厚生労働省令第61号)第7条の2
- 安全計画の減算──こども家庭庁「令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項」9ページ。令和8年7月から適用、1,350円/月
- 非常災害対策計画──同基準第6条第1項・第2項。条文は資料としてこども家庭庁「認可外保育施設における安全計画の策定について」令和4年12月16日事務連絡 別添資料2にも引用されています
- 消防計画・訓練──消防法第8条/消防法施行令第3条の2第2項/消防法施行規則第3条第10項・第11項
- 避難確保計画──水防法第15条の3/土砂災害防止法第8条の2。国土交通省「要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引き」令和4年3月
- BCP──同基準第9条の3(努力義務・令和5年4月1日施行)
- 指導監査での扱い(9項目・夜間訓練・指摘事由)──高槻市 令和7年度 指導監査基準 監査事項⑩⑪⑫⑬⑰
記載は2026年8月時点の情報です。指導監査基準は自治体ごとに定められているため、御園の所在市の基準をご確認ください。
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