保育園の指導監査|安全計画・BCP・訓練の実際のチェック項目

保育園・認定こども園の指導監査で、防災や安全に関する計画や記録がどう見られるのか。この記事は、自治体が公表している実際の監査基準と自主点検表を読み解いて整理したものです。使う資料は次の3つです。

  • 高槻市「令和8年度 指導監査基準」(監査する側が持っている基準表そのもの)
  • 埼玉県「令和8年度 自主点検表(運営管理/処遇)」(園が事前に書いて提出する点検表)
  • 所沢市「令和8年度 自主点検表」

監査は「何を見られるか分からないもの」ではありません。一定の基準は公開されていて、指摘の文例まで書いてあります。行政主体によって多少の違いはありますが、事前に確認することで、準備できるものがあります。

結論:計画の文面は「すること」と「努められたい」に分かれている

高槻市の指導監査基準には、計画ごとに指摘したときに使う標準例文が載っています。その語尾を並べると、園が置かれている状況がはっきりします。

計画監査基準の標準例文(語尾)意味
安全計画安全計画を策定し、…実施すること義務。無ければ改善を求められる
非常災害対策計画非常災害に対する具体的な計画を作成すること条文(基準第6条第1項)は努力義務だが監査基準では作成が指導事項。
消防計画消防計画を作成(変更)し、所轄消防署へ届出を行ってください義務(消防法)
避難確保計画避難確保計画を作成し、市へ届出を行ってください対象施設のみ義務
業務継続計画(BCP)業務継続計画の策定に努められたい努力義務。ただし監査項目としては存在する

ひとつ補足します。非常災害対策計画は、条文(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第6条第1項)では「不断の注意と訓練をするように努めなければならない」=努力義務です。ところが監査基準の標準例文は「作成すること」。条文の強さと、監査で求められる強さは、必ずしも一致しません。この記事で見ていくのは、法令と実際の指導の温度差です。

ここが本題です。BCPは努力義務ですが、「無い場合」という指摘区分が監査基準に用意されています。つまり、作っていなければ「策定に努められたい」と書かれる。強制ではないけれど、記録には残る。この位置づけを正確に知っておくことが、監査対策の出発点になります。

指導監査は、原則として毎年度・実地で行われます

高槻市の場合、認可保育所・保育所型認定こども園・地域型保育事業所は毎年度の実地監査、幼保連携型認定こども園も原則として毎年度の実地監査とされています。

埼玉県・所沢市では、園が先に自主点検表を作成して提出し、当日は点検表に沿って確認していく方式がとられています。自主点検表は「事前に提出する書類」であると同時に、園が自分で日常的に点検するための道具として位置づけられています。

つまり監査対策とは、当日だけ整えることではなく、点検表の項目を1年かけて埋められる運用にしておくことです。

安全計画は、4つの角度から見られます

高槻市の監査基準では、安全計画は「(7)安全確保」の項目に①〜④として並んでいます。保育所・地域型保育事業に○が付いています。

  • ① 策定しているか(設備の安全点検/園外活動を含む安全指導/職員の研修及び訓練を含む計画か)
  • ② 職員に周知し、計画に定める研修及び訓練を定期的に実施しているか
  • ③ 保護者に、安全計画にもとづく取組の内容を周知しているか
  • ④ 定期的な見直しを行っているか

根拠:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第6条の3第1項〜第4項/幼保連携型認定こども園については学校保健安全法第27条(認定こども園法第27条による準用)。

見落とされやすいのは③の保護者周知です。計画は作ったが、掲示していない。これは条文上の独立した義務(第6条の3第3項)で、監査基準にも独立した指摘区分があります。

また埼玉県の自主点検表には、安全計画の欄にはっきりと注意書きがあります。

【R8.7〜】安全計画が未策定の場合、公定価格が減算されます。

令和8年7月から始まった減算が、点検表の本文に書き込まれています。監査と収入が直結したということです。

BCPは「努力義務」でも、点検表では中身まで聞かれます

埼玉県の自主点検表(運営管理)では、業務継続計画が110〜113の4項目に分かれています。

  • 110 業務継続計画を策定していますか
  • 111 業務継続計画には、必要な項目が盛り込まれていますか(→盛り込まれている項目に○を付ける)
  • 112 職員に周知し、必要な研修を定期的に実施していますか
  • 113 計画にもとづき迅速に行動できるよう、訓練を定期的に実施していますか

注目してほしいのは111です。「作ったかどうか」ではなく「中身が入っているか」を、項目ごとにチェックさせる形になっています。点検表が挙げている項目は次のとおりです。

  • ① 事前対策(共通)=平時からの備え/地域との連携の推進、体制構築、人員確保/保護者との連携/関係各所との連携、情報収集等
  • ② 事前対策(感染症)=優先業務の整理/備品の確保/ゾーニング/職員の体調管理/施設利用者の体調管理、入退館管理
  • ③ 事前対策(自然災害)=立地条件/避難場所・避難経路・避難誘導/ライフラインの対応策/備蓄品/非常用持ち出し品・重要書類
  • ④ 発生時対策(感染症)=発生時の事前対策/感染者発生時の対策/通常業務の再開/不足職員の支援対策、人的応援の受け入れ
  • ⑤ 発生時対策(自然災害)=時間経過別の対応災害時の地域ニーズへの対応
  • ⑥ BCPの検証

根拠:埼玉県 令和8年度 自主点検表(運営管理)110〜113/児童福祉施設等における業務継続計画等について(令和4年12月23日付 厚生労働省事務連絡)。

義務ではないものが、実質的に必要になる理由

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

安全計画は義務、BCPは努力義務。条文だけを見ればそのとおりです。しかしこの2つは、書く材料を共有しています。

安全計画には「職員の研修及び訓練」を書く義務があります(第6条の3第1項)。では、その訓練の中身は何か。火災の避難訓練だけを書けば形は整いますが、それでは地震で園に取り残されたときも、感染症で職員の半分が欠けたときも、計画は何も答えを持ちません。

逆にBCPを先に作っておくと、そこには「時間経過別の対応」「人的応援の受け入れ」「地域との連携」が書かれます。安全計画に書くべき訓練の中身は、BCPから出てきます。BCPが無い園の安全計画が薄くなるのは、そのためです。

そしてもうひとつ。高槻市の監査基準は、非常災害対策計画について「避難訓練を実施し、非常災害対策計画の内容を検証し、見直しを行ってください」と求めています。計画は作って終わりではなく、訓練で検証することまでが一続きです。この構造は、BCPでも安全計画でも変わりません。

「義務でないから作らない」を続けると、義務である計画のほうが先に痩せていきます。これが、努力義務のBCPを実質的な義務と考える理由です。

訓練は、回数より「記録の中身」を見られます

避難訓練・消火訓練は月1回以上。これは児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第6条によるもので、埼玉県の自主点検表でも実施回数を書き込む欄になっています。

ただ、回数だけでは足りません。高槻市の監査基準は、記録に何を残すかまで指定しています。

次回の訓練に反映できるよう、訓練の日時、内容、参加人員、所要時間、反省点等を記した実施記録を整備すること。

所要時間と反省点。この2つが抜けている記録が、とても多いと感じています。例えば「何分で全員が園庭に出られたか」などを書いていない記録は、次の訓練の材料になりません。監査基準が「次回の訓練に反映できるよう」と前置きしているのは、そういう意味です。

あわせて、火災だけの訓練になっていないかも見られます。高槻市の基準は「火災のみではなく、地震、水害・土砂災害を含む避難訓練についても実施すること」としています。

夜間を想定した訓練は、保育園の監査項目ではありません。でも実施すべきです。

高槻市の令和8年度 指導監査基準にある監査事項⑬「上記の訓練のうち、年1回は夜間訓練又は夜間を想定した訓練が行われているか」は、該当施設種別の欄で○が付いているのは「高齢」「障がい」「保護」だけです。保育所・認定こども園・地域型保育事業には付いていません。

これは国の考え方とも一致します。夜間の防火管理体制について国が指導マニュアルを示したのは「社会福祉施設及び病院における夜間の防火管理体制指導マニュアルについて(平成元年3月31日 消防予第36号)」ですが、その対象は自ら避難することが困難な者が入所する施設で、通所の保育所は入っていません。

では、保育園に夜間の訓練は不要でしょうか。私はそうは思いません。例えば12月や1月の冬の時期

  • 延長保育の時間帯は、職員が数人まで減ります
  • 18時台に大きな地震が起きれば、園には子どもが残っていて、保護者はまだ職場にいます
  • 暗い中での避難は、昼の避難とまったく別の作業です

埼玉県の自主点検表(別紙4「施設・防犯 安全確認点検項目」)には、保育所にもかかる項目として次があります。

(6)職員体制が手薄になりがちな時間帯やイベント開催時などの安全対策に留意しているか。

「夜間訓練」という言葉では書かれていませんが、手薄な時間帯の安全対策は、保育園でも点検項目です。そしてBCPに「夜間・休日に被災した場合の参集」を書くのであれば、その想定を一度も動かしていない計画は、検証されていないことになります。

年に一度、延長保育の時間帯に合わせて訓練を1本入れる。それだけで、安全計画の訓練欄も、BCPの参集想定も、同時に実のあるものになります。

地域との連携は、はっきり点検項目になっています

「地域連携」は理念の話だと思われがちですが、監査基準では独立した監査事項です。

⑤避難等訓練の実施に当たって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めているか。
【指摘】連携に努めていない場合

高槻市の監査基準では、保育所・認定こども園にも○が付いています。埼玉県の自主点検表はさらに具体的で、「(7)近隣住民等の交流」として2項目あります。

  • 121 自治会行事等に参加していますか
  • 122 周辺の方を園の行事等に招待していますか

所沢市の自主点検表には「近隣のAEDの設置場所、緊急時の使用可否を確認していますか」という項目もあります。園の中にAEDが無くても、隣の施設にあれば使わせてもらえるのか。それを確認しているか、という問いです。

災害のとき、園だけで完結できることはほとんどありません。避難場所までの経路を一緒に歩いたことのある自治会の人が1人いるかどうかで、当日は変わります。そして、その関係は災害が起きてから作れません。

出入り業者は、防犯とBCPの両方から見られます

給食、清掃、警備、リネン、おむつ回収。園には毎日いろいろな業者が出入りします。監査では、これが2つの角度から見られます。

① 防犯 ── 来訪者を管理しているか

(2)来訪者の受付窓口を設置し、受付簿の記入、来訪者証の交付等を行っているか。

埼玉県 自主点検表 別紙4「2 防犯」の項目です。「顔なじみだから」で通してしまうと、この項目は埋まりません。不審者対策は、知らない人を止めることだけでなく、出入りする人を記録することとセットです。

② 業務の継続 ── 業者が止まったときの代わりを決めているか

調理業務を外部委託している園では、埼玉県の自主点検表(処遇)に次の項目があります。

42(2)受託業務の遂行が困難になったときの業務の代行保証について定めていますか。
→ 代行保証業者名:     所在地:

根拠は「保育所における調理業務の委託について」(平成10年2月18日 児発第86号)です。委託先が業務を続けられなくなる事態を、制度は最初から想定しています。そして、代わりの業者名を書かせている。これはBCPそのものの発想です。

ここでも、義務と努力義務がつながります。代行保証は契約書の話で、BCPは努力義務。けれども「給食が止まったらどうするか」という問いは、両方に同じ形で出てきます。片方だけ答えて、もう片方を白紙にしておく理由はありません。

監査の前にそろえる書類

計画関係にしぼると、次の順で確認すると漏れにくくなります。

  1. 安全計画(本体/職員への周知記録/保護者への周知の実物/見直しの記録)
  2. 非常災害対策計画(立地条件・情報入手方法・連絡先・避難開始の判断基準・避難場所・経路・方法・人員体制・関係機関との連絡体制の9点が入っているか)
  3. 消防計画(防火管理者の選任届と一緒に、最新の内容で消防署に出ているか)
  4. 避難確保計画(地域防災計画に要配慮者利用施設として載っている園のみ。訓練後の市への報告まで)
  5. 業務継続計画(BCP)(研修・訓練の記録、見直しの記録まで)
  6. 訓練の実施記録(日時・内容・参加人員・所要時間・反省点)
  7. 来訪者の受付簿、調理委託の契約書と代行保証

1〜5の関係を先に整理したい方は、保育園・認定こども園に必要な5つの計画にまとめています。

よくあるご質問

Q. 監査基準は、どこで手に入りますか。
A. 多くの自治体がホームページで公開しています。高槻市は「児童福祉施設等に対する指導監査」のページで指導監査基準と実施方針を、埼玉県は「実地監査・書面監査 自主点検表」のページで自主点検表を公開しています。まず自分の園の所在地の自治体名で探してください。

Q. BCPは努力義務なので、作らなくても指摘されませんか。
A. 指摘区分としては存在します。高槻市の監査基準には「業務継続計画が策定されていない場合」という区分があり、そのときの標準例文は「業務継続計画の策定に努められたい」です。強い表現ではありませんが、記録には残ります。

Q. 安全計画とBCPは、1つにまとめてよいですか。
A. 根拠条文が違うため、それぞれの要件を満たす必要があります。ただし内容は重なるので、訓練の年間計画を共通のものにして、両方から参照する形にすると運用が楽になります。

Q. 夜間を想定した訓練は、保育園でもやるべきですか。
A. 監査項目ではありません。ただし延長保育の時間帯は職員が減ります。BCPで夜間・休日の参集を検証したのであれば、年1回はその時間帯で訓練しておくことをおすすめします。

Q. 訓練は月1回で足りますか。
A. 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準では避難訓練・消火訓練が月1回以上です。これとは別に、消防法にもとづく消火訓練・避難訓練が年2回以上あり、実施前に所轄消防署への連絡が必要です。避難確保計画の対象園は、その訓練と市への報告も加わります。

Q. 監査で指摘されたら、どうなりますか。
A. 文書で改善を求められ、期限までに改善報告書を出すのが一般的な流れです。多くは書類の不足で、当日までに整えておけば避けられるものです。

まとめ

  • 指導監査の基準は公開されている。指摘の文例まで書いてある
  • 安全計画は「すること」、BCPは「努められたい」。ただしBCPにも指摘区分はある
  • 安全計画に書く訓練の中身は、BCPから出てくる。片方だけでは痩せる
  • 訓練記録は回数ではなく、所要時間と反省点が見られる
  • 夜間訓練は保育園の監査項目ではないが、延長保育の時間帯を一度は動かしておきたい
  • 地域住民との連携、来訪者の受付簿、調理委託の代行保証は、いずれも点検項目

この記事の根拠資料

  • 高槻市「令和8年度 指導監査基準」((1)防災 ②〜⑲、(6)業務継続計画、(7)安全確保 ①〜④)
  • 高槻市「令和8年度 指導監査実施方針」
  • 埼玉県「令和8年度 自主点検表(運営管理)」110〜122、別紙4「施設・防犯 安全確認点検項目」
  • 埼玉県「令和8年度 自主点検表(処遇/保育所)」41〜44、56
  • 所沢市「令和8年度 自主点検表(保育園・幼稚園・認定こども園用)」
  • 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第6条、第6条の3、第9条の3
  • 保育所等における安全計画の策定に関する留意事項等について(令和4年12月15日 事務連絡)
  • 児童福祉施設等における業務継続計画等について(令和4年12月23日 事務連絡)
  • 保育所における調理業務の委託について(平成10年2月18日 児発第86号)
  • 社会福祉施設及び病院における夜間の防火管理体制指導マニュアルについて(平成元年3月31日 消防予第36号)

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