保育園のBCPひな形の選び方|主要4種の比較とWAMネット

この記事の要点(3行)

・保育園・認定こども園のBCPひな形は主に4種類。迷ったらこども家庭庁の児童福祉施設向けを選べば間違いない。
・介護施設向け(厚労省)は内容が充実しているが、用語の読み替えが必要で保育園にはそのまま使えない。
・自治体版は防災に特化しているものが多く、単独では感染症対応が抜ける。WAMネットを使えば分野をまたいで一度に探せる。

「BCP(業務継続計画)のひな形を探したら、いくつも出てきてどれを使えばいいのか分からない」

これは、当事務所にいただくご相談の中でも特に多いものです。こども家庭庁、厚生労働省、都道府県、市町村——それぞれが公式のひな形を出しているため、探せば探すほど選べなくなります。

この記事では、保育園・認定こども園で使える主要なひな形を比較し、結論としてどれを選ぶべきかをお伝えします。あわせて、ひな形をまとめて探せるWAMネットの使い方もご紹介します。

保育園・認定こども園で使える主要ひな形の比較

ひな形の出典対応範囲特徴
こども家庭庁
(児童福祉施設向け)
感染症○/災害○感染症と自然災害が1冊にまとまった公式ひな形。保育園にそのまま使える
厚生労働省
(介護施設
向け)
感染症◎/災害◎感染症編・自然災害編が分冊。記入例も充実。用語の読み替えが必要
大阪市
(保育所向け)
感染症×/災害◎防災に特化。浸水深やハザードマップの記載が多い。避難確保計画の要素が強い
大阪府
(超簡易版BCPシート)
感染症○/災害○A3用紙1枚で完成。まず1枚作ってみたい園におすすめ

結論:まずはこども家庭庁のひな形を選んでください

理由は3つあります。

  • 保育園(児童福祉施設)向けに作られている。用語の読み替えが不要で、そのまま使えます。
  • 感染症と自然災害の両方をカバーしている。1冊で完結するため、書類が分散しません。
  • 自治体への説明がしやすい。「こども家庭庁のひな形を使用しています」と言えることは、それだけで安心材料になります。

ひな形選びで悩む時間があるなら、こども家庭庁のものをダウンロードして、1項目でも埋め始めたほうが前に進みます。

ひな形をまとめて探すなら「WAMネット」が便利です

ここまでは代表的な4種類を比較してきましたが、「そもそも、どこを見れば公式のひな形が揃っているのか」という段階でつまずく方も多くいらっしゃいます。

その場合におすすめしたいのが、WAMネット(ワムネット)です。独立行政法人福祉医療機構が運営する、福祉・保健・医療の総合情報サイトです。

WAMネット(独立行政法人福祉医療機構)

WAMネットの利点は、分野をまたいで一度に探せることです。

  • 障がい福祉
  • 介護福祉
  • 児童福祉(保育園・認定こども園など)

これらの分野のひな形や関連資料が揃っているため、「保育園向けを探していたが、参考に介護施設向けも見てみたい」といった横断的な確認がしやすくなります。省庁のサイトを個別に回るより早く目的の資料にたどり着けます。

認定こども園を運営されている場合も同様です。認定こども園は児童福祉施設としての性格を持つため、こども家庭庁の児童福祉施設向けひな形がそのまま使えます。保育所と認定こども園でBCPの考え方が大きく変わるわけではありません。

ただし注意点もあります。資料が多いぶん、探しているうちに目的を見失いやすいという点です。あくまで「こども家庭庁のひな形を軸にする」と決めたうえで、補足資料を探す場所として使うのが効率的です。

よくある失敗① 介護施設向けをそのまま使ってしまう

厚生労働省の介護施設向けひな形は、記入例が非常に充実しています。検索でも上位に出てくるため、これを見つけて「詳しそうだから」と使い始める園が少なくありません。

しかし、想定されている利用者像が違います。「入所者」「介護職員」「要介護度」といった用語が並び、そのまま読み替えていくと、途中で必ず手が止まります。

内容の充実度は魅力的ですが、参考資料として横に置いておくのが正しい使い方です。本体はこども家庭庁のひな形にしてください。

よくある失敗② 自治体版だけで完結させてしまう

お住まいの自治体がひな形を出していると、「地元のものだから、これが一番正しいはずだ」と考えたくなります。

ただし自治体版は、その地域のリスクに合わせて作られているため、防災(自然災害)に特化しているものが多いという特徴があります。大阪市の保育所向けひな形も、浸水深やハザードマップの記載が中心で、避難確保計画の要素が強くなっています。

これ1本で終わらせると、感染症対応がまるごと抜け落ちます。令和5年4月からの努力義務では感染症への対応も求められているため、ここは埋めておかなければなりません。

水害リスクの高い地域では、こども家庭庁のひな形をBCP本体としつつ、自治体の様式で避難確保計画を別途作成し、一体で運用するのがお勧めです。

ひな形を選んだあと、どの順で埋めるか

ひな形は、頭から順に埋めようとすると必ず詰まります。次の順番で進めてください。

  1. 園のリスクを知る(ハザードマップの確認)
  2. 組織体制を決める(誰が指揮を執るか、不在時は誰が代行するか)
  3. 連絡体制を多重化する(1つの手段に頼らない)
  4. 備蓄と避難を計画する
  5. 感染症対応を決める

この5ステップの具体的な進め方は、保育園のBCPの作り方|5つのステップでやさしく解説で詳しく解説しています。ひな形を手に入れたら、次はこちらをご覧ください。

【現場からのひとこと】完璧を求めない

ひな形選びに時間をかけるほど、BCPが完成しない傾向があります。

消防にいた頃から感じていることですが、備えというのは「完璧なものを作ろうとする」より「不完全でも動き出す」ほうが圧倒的に早く形になります。ひな形はあくまで器です。中身を埋めるのは園の実情であって、どの器を選んだかで結果が決まるわけではありません。またBCPや防災については体制作りが必要です。継続的取り組みの中で時間をかけて構築する必要があります。

迷ったらこども家庭庁。それで十分です。

まとめ

  • 保育園のBCPひな形は、迷ったらこども家庭庁の児童福祉施設向けを選ぶ。
  • 厚労省の介護施設向けは充実しているが、用語の読み替えが必要。参考資料として使う。
  • 自治体版は防災特化のものが多く、単独では感染症対応が抜ける。
  • 水害リスクの高い地域は、こども家庭庁版+自治体の避難確保計画を一体運用する。
  • ひな形選びに迷うより、作り始めるほうが完成が早い。

よくある質問(FAQ)

Q. 認定こども園でも同じひな形を使ってよいですか?
A. はい。認定こども園は児童福祉施設としての性格を持つため、こども家庭庁の児童福祉施設向けひな形がそのまま使えます。保育所と認定こども園でBCPの考え方が大きく変わるわけではありません。

Q. WAMネットとは何ですか?
A. 独立行政法人福祉医療機構が運営する福祉・保健・医療の総合情報サイトです。障がい福祉・介護福祉・児童福祉(保育園・認定こども園など)のひな形や資料が分野をまたいで揃っているため、探す場所として便利です。https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/dprevent/dprevent007.html#001

Q. 保育園のBCPのひな形はどれを使えばいいですか?
A. こども家庭庁の児童福祉施設向け公式ひな形がおすすめです。保育園向けに作られており、感染症と自然災害の両方を1冊でカバーしています。

Q. 厚生労働省のひな形ではだめですか?
A. 介護施設向けのため、「入所者」「介護職員」など用語の読み替えが必要になります。記入例は充実しているので、参考資料として併用するのが現実的です。

Q. 自治体のひな形だけでは不十分ですか?
A. 自治体版は防災に特化していることが多く、感染症対応が含まれない場合があります。その場合は別途補う必要があります。

Q. ひな形の空欄が埋められません。
A. 最初から全部埋める必要はありません。「誰が指揮をとるか」「連絡手段」「避難先」の3つが決まっていれば、まずは十分です。

それでもBCP策定でお困りの方へ

ひな形を選んでも、実際に手を動かす段階で止まってしまうことは珍しくありません。

  • ひな形は用意したが、何をどう書けばいいのか分からない
  • 一度は策定したが、これで合っているのか自信がない。見直してほしい
  • 園だけで抱えるのは難しい。専門家に任せたい

こうしたご希望があれば、お気軽にお問い合わせください。

当事務所では、消防職員として20年間の現場経験と行政書士・防災士・救急救命士の専門知識を活かし、保育園・認定こども園のBCPをひな形選びから策定・机上訓練・見直しまで一貫してサポートしています。すでに策定済みのBCPを拝見して、手を入れたほうがよい点をお伝えすることも可能です。

ご相談はすべて無料です。「BCPってなに?」という入門セミナーも無料で実施しております(30〜60分/ご訪問・オンラインどちらも可/5名〜)。

06-7777-6575 初回相談無料 / 受付時間 8:00〜18:00

▶ 無料相談・無料セミナーのお問い合わせはこちら

この記事の根拠

  • 保育所等のBCP──児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第9条の3(努力義務・令和5年4月1日施行)
  • 国のガイドライン──こども家庭庁「児童福祉施設における業務継続ガイドライン」(令和4年3月31日/令和3年度子ども・子育て支援推進調査研究事業)
  • 指導監査での扱い──高槻市 令和7年度 指導監査基準。「業務継続計画の策定に努められたい」「職員への周知に努められたい」「必要な研修及び訓練の定期的な実施に努められたい」「定期的な見直しに努められたい」

記載は2026年8月時点の情報です。指導監査基準は自治体ごとに定められているため、御園の所在市の基準をご確認ください。

ひな形を選んだら、次に位置づけを整理しておくと迷いません。BCPは努力義務ですが、保育園の安全計画は義務で、令和8年7月から未策定の減算も始まっています。

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